リーンに始めてマーケットを獲りに行く

中山:あと、日本企業の特徴としては、技術を買いに行きたいところが多いですよね。マーケットを獲りに行きたいという発想の会社とはあまり会ったことがなくて、僕からすると「その買った技術、どこで売るんですか?」と。人口が減っていく日本で売るんですか?という話になるわけですよ。だったら、今ある日本の優れた技術をまだ競争の少ないマーケットに持って行くべきだと思います。
ロシアはどうですか。

牧野:それで言うと、ロシアは2つともあるんですよね。マーケットもあるし、技術もある。タッチポイントさえ増やしていけば、いろんなパターンが生まれてくると思っています。

最初は、スタートアップの技術を日本企業に買ってもらうことを想定して支援していたんですけど、タッチポイントを作っていくうちに、むしろ、日本企業が「ウチの技術、ロシアに持って行けるわ」というケースが多くあり、たとえば、放送業界は10年遅れているので、ロシアに持って来られるというのが見つかったりしました。

中山:最近、ブラジル進出の相談をいただくようになってきたので、VCとは別にチームを作り、「駐在代行」をしています。いきなり、ブラジルの藤田田さんを探すのは難しいので、支店を作る企業が多いんですが、それだと、駐在支店長の時間の9割が会計や労務に割かれ、人事もできず、日本語や英語を話せる人を人材紹介会社に紹介してもらって、肝心の売る作業に注力できない、ということが起こります。なので、支店を作るのではなく、僕たちに依頼してもらって、売る業務を代行するというサービスを提供しています。

「まず、ハンドキャリーで100個持って来て、100個売れるかどうかから試しませんか」っていうのがあると思うんですよね。支店などは、売れてから考えませんか、と思っています。いきなり現地の工場を買ったりはせず、最初は輸出でいいんです。

牧野:海外の方がリーンに始めることが刺さりやすいんじゃないかと思いますよね。支店を作るよりも、ランディングページとかから作って、仮説と検証と意思決定を繰り返して。

中山:それで10都市くらいターゲットを決めてやってみて、意外とブラジルでは芽が出ないけど、アフリカやロシアで芽の出るビジネスもあるかもしれないですよね。ランディングページを作って始めるなら、数十万円でできちゃう。それで分かることってたくさんあると思うんですよ。

なんて言っていますが、言うは易しで、実際にやるのは大変なのは分かってはいるんですけど。でもなんか、みんな「まずは日本でフルポテンシャルだ。次はアジアで」とか言っているので、アンチテーゼとしてこういう球を投げる人もいないといけないのかなと思っています。

寺久保:そうですね。僕は出資者にファンドのリターン以上の価値を出すために、3段階の支援方法を考えています。

第一の支援フェーズとして、アフリカにインキュベーション拠点を作っていこうと思っています。担当者には、投資する前の企業の相談を受けるところから入ってもらいます。月にして何十社の相談を受けるので、つまり、その何十社が何を考えているのかという情報と、あと現地の人がどんな課題を持っているのかが明確に見えてくることがあるので、そのなかで日系企業として何ができるんだろう、自社のアセットをそこに提供したらどんなことができるのかというのを一緒に考えるフェーズです。

そこで立てた仮説に基づいて、バリューチェーンに入り込んでいくのが次のフェーズで、たとえば流通チェーンの一気通貫の仕組みづくりのなかでは、日系企業として車をリースしてもらい、そのスタートアップの成長に合わせて販売台数を増やしていくということができたりします。

そういう活動を一定期間した上で、より深い連携をしていくのが3つめのフェーズになります。ここで初めて直接投資という深いコミットをしてもらいます。

この3段階の支援を通じて、単純に情報だけをレポートとして提供するのではなく、事業を一緒に作っていくことができるようにしています。

中山:どういった立場でも最終的に獲りたい果実は皆同じで、そのマーケットにある経済圏から何らかの付加価値を生み出すことだと思いますが、どういった情報をどれくらいどこから得るかは、企業や事業によって変わってくると思います。それを踏まえてファンドを選ぶのが大事です。その際、企業にとってはシード期から張っていることが大事だと思います。マーケットでどういう課題があって、どこがビジネスの種になりそうなのか、スタートアップがその課題のソリューションをどう考えているかを把握し、つまり、何がその土地で求められているかを知って、ゼロから新規事業をやるのか、はたまた、もう少し大きめの会社を買収してそこにアプローチするのかの判断をするのが、一番大事なんじゃないですかね。

「ブラジルに連れて行った日本人の数」を人生のKPIにしています

小川:終わるのが惜しいですが、そろそろ時間になりますので、それぞれ一言ずつ、もらえますか。

牧野:VCっていろんな価値を提供できるんだなと、中山さんと寺久保さんのおかげで分かったのは僕としてもありがたかったです。ありがとうございました。

中山:いや、僕もロシアのことは全然理解していなかったですし、今後もいろいろと教えていただきたいなと思いました。これまで寺久保さんとはちょこちょこ話してきましたが、日本から遠い新興国ということで同じような環境にあったり、同じような悩みを抱えているんだなって思って、同志として一緒に頑張っていきたいなって思いました。

僕自身、会社のビジョンとして、「日本に真のグローバル視点を」というのを掲げておりまして、アメリカだけの視点ではなく広く見ていきましょうよっていうこともあって、最近、人生のKPIを決めたんですよ。「ブラジルに連れてった日本人の数」ってことにしたんです。

牧野:僕もKPIにしています!

中山:ビジネスになるかもしれないし、ならなくても、何人連れて来たって思いながら死んでいければと思っているので、ぜひブラジルに来てください。

寺久保:アフリカに日本企業が全然来ないなって感じているなかで、同じような想いがロシアでもブラジルでもあるんだなというのを感じました。日本のマーケットが確実に縮小していくなかで、日系企業にとってはいかに外で戦うかという勝負でしかないのかなと思うので、長期で考えたときに、まだまだ開拓ができていない国があるのは、日本企業としてもう一回、世界へ展開できる可能性が残っているんだなって、あらためて勉強になりました。アフリカでのそういった支援がさらにできるといいなと思いました。

小川:本日はありがとうございました。

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