これから求められる人材育成とは ― 未経験者の戦力化

INTERVIEW

株式会社アジャイルHRの代表取締役社長 松丘啓司氏、株式会社あしたのチームの代表取締役社長 CEO 赤羽博行氏をお招きし、スカイライトコンサルティング株式会社シニアマネジャー 椋田千鶴を交え、これから求められる人材育成について鼎談を行いました。

(写真左上 松丘啓司氏、右上 赤羽博行氏、左下 椋田千鶴)


松丘 啓司 氏

株式会社アジャイルHR
代表取締役社長

1986年に東京大学法学部を卒業後、アクセンチュアに入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に起業。2018年にアジャイルHRを設立し、日本企業のパフォーマンスマネジメントの変革をミッションとして、クラウドサービス(WAKUAS)とコンサルティングサービスを提供している。主な著書に『エンゲージメントを高める会社』『1on1マネジメント』『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』などがある。

赤羽 博行 氏

株式会社あしたのチーム
代表取締役社長 CEO

1974年、千葉県松戸市生まれ。大学卒業後、オービックビジネスコンサルタントを経て、スカイライトコンサルティングに参画、その後ディレクターに就任。完全年功序列の大手企業・完全実力主義のベンチャー企業、双方での経験を活かし、2009年設立直後のあしたのチームに参画。取締役経営企画本部長、取締役コンサルティング本部本部長を歴任し、2020年11月より代表取締役社長 CEOに就任。「大半のビジネスマンが頑張りを正当に評価されず、本来の力を発揮できていない」という現実を変えるため、「人事評価制度を通じた日本の働き方改革と生産性向上」に全てを捧げ奮闘中。

椋田 千鶴

スカイライトコンサルティング株式会社
シニアマネジャー

システムエンジニアとしてキャリアをスタート、システム設計やプロジェクトマネジメントを経験。2002年にスカイライトコンサルティングに参画。組織の統廃合などを背景に多様な文化を持つことを強みとする企業の組織と人の成長に関わるコンサルティングに従事。近年は、次世代リーダーの育成や組織変革をリードする組織立ち上げなど個と組織の成長を連動させる中長期的な取り組みへの貢献機会に恵まれる。人や組織のポテンシャルを活かしたプロジェクト推進アプローチを探究中。

ー まずはじめに、皆様に自己紹介をお願いします

松丘:弊社はパフォーマンスマネジメント、キャリアマネジメント、組織のマネジメントを変革するコンサルティングを提供しています。これらのマネジメントを日常的に運用していくためのクラウドサービスとして、OKRという目標設定と1on1を組み合わせたサービス『WAKUAS』やその周辺のコンサルティングを提供しています。

赤羽:私たちは、企業成長の生命線である人事制度を策定し、その制度を効果的に運用して意図した効果を出すために伴走するコンサルティングと、それを定着化させるためのプラットフォームとしての人事評価のクラウドサービス(SaaS)を提供しています。人事制度は作って終わりではなく、企業の成長とともにブラッシュアップしていく時代、それらをワンストップで提供しています。

椋田:社内の教育プログラムデザインを担当して8年になります。弊社のコンサルタントは、挙手制でプロジェクトに参画することが特徴です。プロジェクト参画中のコンサルタントの育成は、プロジェクトの責任者であるジョブマネジャーが担います。私は、コンサルタントがプロジェクトから離任したタイミングで、プロジェクトで経験したものを棚卸しすることで、スキルや興味・関心を次の機会に繋いでいくことを支援しています。

ー 人材育成というテーマに取り組むことになったきっかけを教えてください

赤羽:エンジニアとして入社したITの会社を経て、スカイライトに12年間在籍しました。この期間で自分の成長の源泉になったのが、スカイライトのコンピテンシー評価でした。コンサルタントとして成長していくために求められる行動が明文化されていたので、コンサルタント未経験のエンジニアであった私はこの仕組みのおかげで成長できたと感じています。

一方、コンサルタント時代の顧客との接点で、非常に賢く優秀な方々に出会う機会がありましたが、この方々がご自身のポテンシャルを最大限に活かしていないことに違和感がありました。「なんで、もっと頑張らないのだろう、なんで本気じゃないんだろう」と。突き詰めて考えると、顧客企業の評価制度が、どう頑張っても評価も給与も変わらない仕組みであることが要因ではないかと感じました。優秀なのに、そのパフォーマンスを活かしきれない仕組みを改めないと世の中を変えることができないと痛感し、スカイライトを飛び出し、今の事業に取り組むことを決めました。

松丘:私自身がこのテーマにおいて感じていることは、従来の売上や利益を分解して上から設定されるパフォーマンスマネジメントでは、企業全体のパフォーマンスを上げていくことができないのではないかという懸念です。社員個人のキャリア、自律性や人の多様性などを理解していかないと、社員のパフォーマンスの最大化が図れないのではないかと考えています。

このことを感じ始めたのは、二十数年前に大学の同期と話していたときでした。彼らはみんな、自分の会社の内側のことしか考えていなかったのです。一流企業のエリートと呼ばれる存在であったものの、会社の中の閉ざされた世界に視野も閉ざされていたんですね。もっと個のポテンシャルを活かすマネジメントが必要なんだろうなと感じました。案の定、それから20年、30年、日本企業は全く成長していない。生産性も上がっていない状態で、生産年齢人口も減少している。企業の成長について、根本的にマネジメントを変えていかないといけないと強く感じています。

ー 現在の人材育成に関する課題についてどのようにとらえていますか

赤羽:先ほど、お話ししたとおり、やる気・能力がある人たちを活かしきれていないという点が最も大きい課題感です。一方で、現在、弊社の顧客は従業員が100名前後の中小企業が多く、そもそも人事担当者がおらず、社長の一存で給与が決まるような企業もあり、育成という視座まで至っていないケースも見受けられます。

そのような企業では、人材育成はOJTで終わってしまうことも多いです。つまり、「背中を見て育て」ということですね。私は、このやり方にも問題があると感じています。部下の役割や部下の目標、そして、部下自身がどこに向かって成長していけばいいのかという大事な部分がないがしろにされています。役割、目標の明文化を通じて、成長の方向を明示できていない点が大きな課題だと思います。

松丘:大企業でも基本的には同じことだと思います。背中を見て育てというのは、どちらかといえば、自分で気づけということです。ただ、自分で気づくということはたいへん難しい。社会人の学びの7割は仕事での経験を通して得られるといいます。経験からの学びというのは、経験をした後に、「これには、こういう意味があるんだ」、「これってこういう風に応用すればいいのか」など、その経験と、それ以外で得られた知識を組み合わせて自分で気づいていくということです。経験を自分の気づきや学びに落としていく時間を設けないのは、非常に効率の良くない状態だと思います。

また、評価についても、MBO(目標管理)といった、会社が求める全体の数字を個人にまで分解して落とし込んでいくという、社員の個を尊重できていない仕組みにも問題があるように感じています。上から一方的に目標を与えられるので、達成すればそれ以上は何もしない、達成が難しい場合は諦める、自分にばかり関心が向いてしまいコラボレーションが進まないといったことが起きています。

椋田:松丘さんのお話にもありましたが、まさに経験学習をベースとした成長促進サイクルの強化が課題だと感じています。弊社の場合、プロジェクト型の仕事にコンサルタントとして参画し素晴らしい経験・体験を重ねていくことができます。ひとつの経験を次のチャレンジに繋げていくことで、個のキャリアが豊かになり、組織としても経験値を高めることができます。自身の経験を未来の経験に活かしていくために個としても、会社としても、まだまだできることがあると感じています。

次ページ)人材を成長させている企業や成長できている人材が持つ要素、これから求められる人材育成

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Skylight Consulting Inc.

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