日本全体の人口は引き続き1億人を超えた状態が続き、縮小はするものの小さくない市場であることは間違いない。だが、市場の縮小が予測され、かつ労働力の確保が難しい国において、新たな投資により、大きな事業を作っていくことは、かなりの困難がつきまとうだろう。地盤沈下が始まり、それが続く国に大きな投資をするより、成長する可能性の高い国や地域により大きな投資を振り向ける方が、妥当な判断ということになる。

新興国は人口ボーナス期

成長する可能性の高い地域として、本稿ではスカイライトが事業を展開している3地域を取り上げたい。それぞれ総人口や生産年齢人口が増加していくことで成長しやすい環境である、「人口ボーナス期」にあると考えている。東南アジア、中南米、東アフリカだ。年齢帯別の人口推移はそれぞれ以下のようになっている(図6、図7、図8)。

2023年時点で、東アフリカは約5億人、中南米は約6.5億人、東南アジアは約7億人の域内人口となっている。人口増加の傾向は異なっており、東アフリカは子どもがどんどん増加し、人口増加の勢いが止まらない状態。中南米は子どもの人口が減りつつあり、人口全体の増加率は低下しつつあるが、生産年齢人口は依然として増加している。東南アジアはその中間といったところであろうか。

一つ注意したいのは、同地域でも、国によって状況が異なることだ。例えばタイは東南アジア地域では先に経済発展を遂げたと考えられるが、人口の増加が止まり、生産年齢人口には若干の減少が見られる。一方でインドネシアはかなりの人口増加傾向にある。ベトナムはその中間で、人口増加が落ち着きつつある。

一部の国で異なる状況にありつつも、全般的な傾向としては、ここに取り上げた3地域は人口ボーナス期にあると言えるだろう。

域内人口もそれぞれ5億~7億人であり、経済発展とともにマーケットとしての魅力も高まることが期待できる。職種によって要求される教育水準は変わるものの、必要となる労働力を確保できる可能性は十分にあると考えられる。特に、中南米のブラジルやメキシコはGDPの国別ランキングで10位前後であり、かつ、一人あたりGDPも1万ドルを超えていて、ビジネスに必要なインフラもかなり整っている。高等教育を受けた人材も、米国等への留学経験者を含め多い。マーケットとしての魅力があるし、事業を遂行するリソース確保も十分できるのではないだろうか。

新興国で起こっているリープフロッグ(一足飛び)なイノベーション

新興国では、先進国で過去に進んだイノベーションをそのままなぞっていくのではなく、リープフロッグなイノベーションが起きている。リープフロッグとは直訳するとカエル飛び。要は順を追わずに一足飛びに突然変異のような進化をしているということだ。

電話を例にして説明しよう。

日本での電話は、まず有線のアナログ電話が普及した。電柱に電話線を張り巡らし、各家庭や職場に有線を引く。やがてデジタル化が進み、デジタル電話へと進化していく。時を前後して、アナログの携帯電話として自動車電話やショルダーホンが小型化し、一般に普及していく。さらに携帯電話もデジタル回線化していく。携帯電話も最初は通話のみ。それがテキストでのやりとりができるようになり、フィーチャーフォン上でもデータ通信ができるようなモバイルサービスが始まる。回線が2G→3G→4G→5Gと大容量かつ低遅延になっていく過程でスマートフォンが登場。スマートフォンからインターネット経由で何でもできるようになった。

このように順を追ってイノベーションが進んだのが日本だ。ところが新興国では、初めて持つ電話が、いきなりスマートフォンである。順を追っての進化ではなく、一足飛びだ(図9)。

スマートフォンを持てば、アプリを介したサービスもいきなり利用できるようになる。
銀行口座を持たず、クレジットカードも持たない、いや、持てない層が、いきなりスマートフォン上での少額決済サービスを利用可能となる。地図サービスに加え、GPSでの位置情報サービスは低所得層にギグワーカーとしてデリバリーサービスを担うことを可能とした。こういうイノベーションのダイナミズムは興味深いところだが、ビジネスを遂行する上で、リープフロッグとはいかない領域もあることには注意したいところだ。

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Skylight Consulting Inc.

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