例えば、新興国でEコマースを展開しようとすると、住所がきちんと整備されていないために、届け先に確実に配送することが難しい状況に出くわす。道路を含め交通網の整備が不十分で、極端な交通渋滞が常態化している新興国は極めて多いため、時間通りに物を届けることはさらに難しくなる。日本では時間指定の配送も当たり前になっているし、供給業者とのジャストインタイムのネットワークも構築可能だが、新興国ではそうはいかない。予定通りに届かないことを考慮に入れたビジネス設計が必要となる。

話をEコマースに戻すと、新興国では消費者とEC業者、金融業者との信用関係が成立していない状況が見受けられる。そうすると、購入した物品の支払いは代引きが多くなる。モノを見るまで信じられないということだ。すると消費者が見てから最終的に買うか買わないかを決める形となり、売買の成立率や配送完了率が低下する。

これらの課題は簡単に解決しそうもないが、果敢にチャレンジしているスタートアップも多い。根本的な課題解決には、交通インフラや金融インフラといったビジネスに必要なインフラ整備が進み、経済が発展し、中間層がある程度増え、信用が成り立つ社会になっていくことが肝心で、そうするとより高度なビジネスプロセスを新興国で実装することも可能になるのではないだろうか?本稿ではGDPや人口といった「超マクロ」の視点で論を多く展開しているが、実際にビジネスを進める上では、現地の市場特性やビジネス慣行への深い理解が欠かせない。それに応じて、自身のビジネスを多少なりとも柔軟に適応させることも必要だ。

スカイライトのビジネス展開の方針

新興国へのビジネスエントリーは容易ではない。当該国や地域の情報収集をした上で実際に訪問し、前述のように、理解を深めることがまず必要だ。そしてGoと判断するにあたっては、大きく分けて以下の3つの展開の可能性を考慮し、それぞれの国・地域に応じて、どの方向で進めるかを選択している。

展開の方向性(その1)

ビジネスに必要なインフラがある程度整い、かつ、日本企業の進出も多い国・地域であれば、スカイライトのコンサルティングサービスを展開できる可能性があると考えている。スカイライトのコンサルティングは戦略や方針の立案にとどまらず、実際にビジネスオペレーションを立ち上げたり、改革改善を実践したりするまでをサポートしている。現地に進出した日本企業の事業の改革改善を行うことや、新たな事業領域、新たな国・地域への進出支援などがコンサルティングの範囲になる。さらに、現地での雇用や現地企業との提携等が進めば、現地企業へのコンサルティングも可能となる。

展開の方向性(その2)

現地のスタートアップに対し、直接またはファンドを通じた間接で少額投資を行うことも方向性の一つとして考え、実施している。スタートアップは何らかの社会課題や不便を解消するために、サービスやプロダクトを開発し、現地の市場に投入している。うまく進めば、投資リターンも期待できる。

投資者の立場では、スタートアップの事業運営に直接タッチすることは基本的にないが、どういうサービスやプロダクトを開発し、投入した反応がどうだったかについて、投資者としてアクセスすることが可能となる。それにより、その国や地域の市場特性、ビジネス慣行などへの理解を深めることができる。

展開の方向性(その3)

現地で事業運営の体制を作れ、事業の採算性が見込まれると考えられる場合、実際に現地で事業を行う場合もある。新興国での新規ビジネスは予測不可能なことが多く、リスクは高い。しかし、実際に事業を遂行する立場になるため、市場を深く理解し、ビジネス慣行なども把握することになる。逆に言うと、そうでなければ事業は立ち上がらない。

事業が立ち上がった場合、スカイライト資本の下、クローズの環境で大きくすることはあまり考えていない。当該事業に興味のある企業と連携したイノベーションを進めたいと考えている。いわゆるオープンイノベーションであり、それがさらに進展した場合には、資本提携や売却なども視野に入れていく。

まとめ

本稿では、スカイライトがなぜ新興国ビジネスを進めているのか、その考え方と方向性について記した。日本経済の地盤沈下は今後も続くことは決定的であり、日本企業にとって日本でのビジネスは大切ではあるものの、日本「だけ」にとどまっていることは、大きなリスクとなるのではないだろうか。

スカイライトは新興国において1)コンサルティング、2)スタートアップ投資、3)新規事業の3つの展開の方向性を考えており、実際に進めている。これらはリスクを伴うことは間違いないが、日本に「だけ」とどまるリスクは回避できると考えている。

また、スカイライトは祖業がビジネスコンサルティングであり、クライアントとなる企業や団体を支援することが得意な会社である。展開の方向性として記した3つのうち、コンサルティングやスタートアップ投資はもちろん他の企業や団体を支援する事業であるが、新規事業であっても自社のみで事業展開を続けることは考えていない。

他の企業・団体と連携しながら、新興国も含めたビジネスを展開していきたいと考えている。

1 2

3

Skylight Consulting Inc.

Skylight Consulting Inc.

当サイトは、スカイライト コンサルティング株式会社の広報誌Webサイトです。弊社ではお客様企業へのインタビューやコンサルタントによるコラム等を掲載した広報誌を年2回(春・秋)発行し、お客様にお配りしております。当サイトではその各記事をご覧いただけます。

関連記事

特集記事

TOP
CLOSE