2点目は、コンサルティングサービスの価値について、ベトナムの企業ならではの捉え方があること。日本では、例えば顧客が求めるゴールに向けて計画通りにプロジェクトを遂行していく推進力に大きな価値を感じていただけます。特に大企業で、多くの組織や指揮命令系統が複雑に絡み合うような場面では、推進する機能が弱いとプロジェクトは立ち行かなくなります。しかし、少なくとも現時点のベトナムではそのようなケースは稀です。市場自体が急成長の渦中にあり、多くの場合、売上などの目に見える定量的な成果が期待の中心になるためです。そのような捉え方の実態を理解したことで、「成果報酬型」でのサービス提供にも対応するようになりました。定量的な成果が結実するまでは多少のリードタイムが掛かるものですが、顧客の目線で価値に向き合った結果、場合によっては一定の投資(人材と時間)が必要だということも確信できました。
そうした苦労の時期、スカイライトが、世界各地に多数の拠点を有しグローバル規模で事業展開しているトランスコスモスグループに属することは一つの自信となっていました。当時、トランスコスモスとの協業体制でベトナムに関わる案件に従事していた経験から、グローバルビジネスを創造していくことの意義を実感できていたのです。また、ベトナムに進出してきた日系企業とも日々コンタクトを重ね、話を聞いていくと、過去に同じような苦労を経験されていることが分かりました。そうした現地でのリアルな情報も吸収していき、「ベトナムという地で、顧客に大きく貢献していきたい」との想いを高め、いよいよ法人設立のGoが出ました。
ベトナム(国と人)に真摯に向き合い、見えてきたもの
こうして様々な苦労を乗り越えて、2022年8月にホーチミンシティにスカイライトベトナム(Skylight Consulting Vietnam 以下、当社)を設立する運びとなりました。自ら会場の準備や招待状の手配を主導し、11月には開所式を執り行いました。招待者のお1人お1人と現地でご一緒したエピソードを語りあい、「このような盛大な開所式には足を運んだことがない」「今後、案件で是非ご一緒したい」など、ありがたいお言葉を多数いただきました。設立まで苦労を重ねながらも多くの方々とコネクションを構築してきたことが、この先ベトナムという地で顧客価値の実現につながっていくとの期待を胸に、当社は事業を開始しました。
盤石な体制でサービスを提供できるように、設立当初は法人の基盤を固めることに注力しました。顧客のニーズに敏感であり続けることこそが、良いサービスを提供していくキーになると考えたので、顧客はどのようなサービスを求めているのか、案件をこなしながら検証と改善を繰り返しました。
コンサルティングは人と人との関わりにより成り立つサービスであり、人に向き合うことが大切です。日本から来た異国人である私がベトナム人とどう向き合えば良いか、日々のコミュニケーションを通じて理解を深めていきました。総じてベトナムには、「諦めない精神」「できないと言わない姿勢」が根付いています。日本人が共感しやすい部分があり、両国の親和性が高いと言われる一つの要素であると感じます。一方、南北に縦長なベトナムには、国内でも地形からくる気候的な違い(北部は四季、南部は雨季と乾季の二季)や、地域による歴史的な背景の違いがあり、それらが複合的に絡み合うことで、ベトナム人の価値観や行動スタイル、性格に顕著な多様性をもたらしています。ベトナムという地でビジネスをするならば、1人1人に向き合った上で相手の考えや求めている内容、その度合いまで、しっかりと理解することが重要だと考えています。
また、行間の曖昧さを残さずに明確に言語化して伝えることも必要です。「ここまで言えば、あとは大丈夫だろう」という楽観がミスを招くこともあります。また、「ある程度の裁量があった方が良い」とも限らず、「明確でない仕事はやりようがない」と考える人が多いのも実態です。
こうした、人に向き合ってきた経験は、社内における組織設計や採用活動に活かされています。組織設計であれば、人事評価や給与体系、福利厚生のベースを明確に定義した上で、社員1人1人の意見も考慮しながらチューニングを施すことで、十分な納得感を醸成しました。採用活動では、当社として求めるコンサルタント像を明確に言語化しました。入社後も、定義された役割をしっかりと果たすことはもちろん、「言われなくても主体的に動く」「オープンなマインドで顧客に寄り添う」などのスカイライトのスタイルを併せて身につけられるよう、育成の進め方にも工夫を凝らしました。そうしたスカイライトらしさ、顧客に価値を感じてもらうためのスカイライトの強みをベースに据え、メンバー1人1人がモチベーション高く成長し続けられる組織を作っていきたいと考えています。
2023年7月に入社したメンバーの1人は、若手でありながら、「顧客価値とは何か」という軸足をブラすことなく、任された役割を超えて自発的に動いてくれています。顧客からの要望の範囲にとどまらず、顧客の目指すゴールにとって何がベストかを常に考え抜いてくれています。自ら提言し、説得しながら関係者を巻き込み推進していく姿勢は、まさにスカイライトのコンサルタントらしい動き方であり、顧客からも高く評価いただいています。また、同僚や後輩のプロジェクトメンバーをリードし、チームとしての顧客価値の最大化にも努めてくれています。そうしたメンバーの背中を見て他のメンバーも刺激を受け、メンバー同士が切磋琢磨していく環境ができてきています。
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