Rent to Own事業の開始
ZARIBEE Bike事業は、スカイライトが一から実施する国を選定したわけではありません。スカイライトがPoCに参加する以前に、ごく初期のPoCが実施されていたことから、事業を進めるために必要な協業パートナーの選定を含めて、開始しやすい状況が既にケニアにはありました。
協業パートナーとして特に重要なのは、ケニアでバイクディーラーを手掛ける MAXY Limitedの代表松本義和氏の存在です。松本氏は10年ほどケニアで事業を行っており、現地の日本人の誰もが知る人物です。2021年7 月のケニア法人設立時にもずいぶんと助けてもらいましたし、現在も ZARIBEE Kenyaにとってなくてはならないパートナーです。
2020年は、コロナ禍で現地への出張も容易ではない時期であったため、パートナー企業との協力関係の下、業務オペレーション設計、コストや売上のシミュレーション、ITシステム等、日本で準備できることを進めました。そして、2021年の法人設立のタイミングで盛田はケニア入りし、その翌々月にサービスインを迎えました。
実際にやってみたらやっぱり、うまくいくわけもなく、という感じで。お客さんは時間通りに来ないし、ケニアの陸運局はナンバープレートを出さないし、システムは止まるし、みたいなことがひたすらあって。支払いができなくなったライダーがオフィスに来て、夜まで立てこもったり、という日々でした。実際に現地で事業を始めるまで、ボダボダライダー相手のビジネスをすることの大変さを、僕自身も何も理解していなかった。知ってしまった今となっては、もう一度ゼロからやりたいか、と言われたら、やる勇気がないかもな、というレベルです。どの日本人に話しても、ボダボダビジネスなんて……と驚かれますね(笑)。≪盛田≫
元々、コンサルタントという職種は事業の裏方の存在であり、優れたコンサルタントが必ずしも優れた起業家になれるわけではありません。盛田自身、大手自動車メーカーに勤めた後、スカイライトでコンサルタントとして活躍してきましたが、盛田本人は常々「自分は周りに比べコンサルタントとしては優秀な人間ではない」と言っており、周囲も苦笑いします。
事業の開始から数年が経過し、ZARIBEE Kenyaは40人の現地スタッフを抱えるほどに成長しました。現地スタッフに対し、会社の方向性を語り、スタッフを力強く鼓舞する姿を見れば、盛田以上にケニア事業をここまで持ってこられた人間はいないことを疑う人はないでしょう。会社組織が成長するにつれ、盛田自身もスタッフと共に現地で成長していきました。
KYCを支えるフロントオフィス
顧客であるバイクライダーがオフィスに来店する際の受付および、バイクを契約するまでの一連の手続きを担当するのがフロントオフィスチームです。その役割は単純ではありません。特に重要となるのは、「KYC(Know Your Customer)」という契約するライダーの本人確認です。信用力のない顧客に対してファイナンスサービスを提供している我々にとって、契約時のKYCを疎かにすると、支払率の悪化や盗難リスク増加を招くことになり、事業の収支に直結します。
厳しくジャッジすれば良いかというと、そうではありません。真面目にキチンと働こうとするライダーも多くいて、そういうライダーを見極め、バイクを提供するのがZARIBEE Bikeビジネスの一つの肝です。チームリーダーであるAnnは、日々、そんな新規顧客となるライダーたちと接しています。
ライダーが私たちZARIBEEと過ごす19ヶ月間の入り口にあたる契約という業務は、会社にとってもライダーにとっても非常に重要なイベントです。毎日たくさんのお客様が訪れるので大変ではありますが、常に明るく、ホスピタリティを持って取り組むことを心がけています。ZARIBEEでボダボダライダーと接することで、彼らに対する見方がすごく変わりました。ケニアでは、ボダボダライダーは、ギャングのようなイメージを持たれていたりするので、私自身、実際のところ、少し怖いななどと、偏見を持っていました。でも、彼らと話すうちに、彼らの勤勉さや、彼らが日々どれだけ大変な思いをしているかを知りました。私たちと同じように、家族がいて、夢や希望を持っています。以前、私が担当したお客様が無実の罪で投獄されたことがありました。とても勤勉で、1回目の契約は無事に卒業(完了)していた、妻と幼い子どもがいる若いライダーでした。2回目の契約から3ヶ月経った時に、事件が起こってしまいました。釈放された後、彼はオフィスに来て、涙ながらに経緯を共有してくれました。私は、彼の家族にどれだけの負担がかかったかを考えると、辛かったし、何もできない自分に無力感を覚えました。その時に、ライダーという仕事の苦労は、道の悪さとか、悪天候とか、そういうことを超えて、こうした不条理との戦いなんだ、と気づきました。この出来事を通じて、私たちが提供できる最も意味のあるサポートは、単なる仕事の枠を超えたものであることを実感したし、その意味で、会社のミッションやビジョンにも共感しています。≪Ann≫
Ann自身もZARIBEE Bikeで成長できたと言います。実際、彼女は新卒で入社し、2年足らずで5人以上のメンバーを抱えるチームリーダーになりました。