ライダーと伴走し続けるライダーマネージャー
ZARIBEE Bikeでは、競合企業が設置する「債権回収」というポジションを敢えて作らず、代わりにライダーと伴走する「ライダーマネージャー(RM)」というポジションを設けています。RMは「支払最終日まで一緒に走り抜こう」とライダーを励まして、卒業までを支えます。電話対応も多いですが、盛田はスタッフに「現場に行ってライダーに会おう」と言い、顧客を理解するよう促しています。
ZARIBEE Bikeは、アフリカのマイクロファイナンスにおいて「優秀」とされる80%の支払率を大きく上回る90%超の支払率を維持しており、クチコミによる高い評価も広がっています。ライダーとRMの信頼関係でサービスを独自の形に進化させた結果であり、マーケティングコストの削減を含め、事業の収益性にも良い効果を生んでいます。
最古参メンバーの一人であり、チームリーダーを務めるMartinは、RMの仕事を通じて一番やりがいを感じるのはライダーに卒業証書を渡す瞬間だと言います。
以前に担当していたお客様で、契約途中で急に支払いが滞るようになったライダーがいました。最初は何が起きているのか全然話してくれなかったんですが、ある日、彼の妻がステージ4のガンにかかっていることを打ち明けてくれました。経済的にも困窮していて、何度も人生を諦めそうになったと言っていました。ほとんどの時間を妻と子どもたちの世話に費やしていたので、自由に働くことができず、家賃や食事にも困っていて、それでも、僕からの支払い確認のプレッシャーにずっと耐えていた。そんな状況で彼にストレスをかけてしまったことに罪悪感を抱きました。これ以上彼を追い詰めることはできないと思い、Renji(盛田)に相談しました。他のライダーに対する「Fairness(公平性)」を損なっていないかという議論の末、支払い義務を猶予することになりました。そこからは、彼との日々のコミュニケーションは支払いの確認ではなく、家族の状況の確認に変わり、できる限り彼を励まし続けました。結果、驚くことに、彼は契約最終日に全ての支払いを完了したのです。事務所に来た彼は、僕の手を握って感謝の言葉を伝えてくれました。その時、小さな励ましでも大きな意味を持つことを実感しました。≪Martin≫
Martinは参画当初と今では自身の生活にも気持ちにも変化があると言ってくれています。
入社当初は、スタートアップ企業ということもあり、報酬など物質的な面で大きな期待はしてませんでした。ただ、自分自身の成長という意味で、何かしらの経験を積めるといいなという程度に考えていました。良い意味で間違ってました。
事業の成長とともに、スタッフの数はどんどん増え、僕の給与も上がり、生活も良くなりました。おかげで、妻と子どもたちに、自分が経験したよりも良い生活を提供できるようになりました。僕が一番望んでいたことで、子どもたちには可能な限り最高の教育を受けさせて、明るい未来を保証してあげたいと思っています。
また、学歴ではなく、過去の経験や日常生活を通じて自分が会社にもたらすことができる価値に焦点を当てるように言われたのは、自分にとって大きなことでした。
僕の人生は劇的に変わりました。これまで、自分に与えられたタスクをうまくこなせない時、良い教育を受けていないせいだと思ってしまうことがよくありました。特に、大卒の同僚たちと一緒に働いていると、恥ずかしくて逃げ出したくなることもありました。でも、過去は変えられないという事実を受け入れて、自分自身を正直に表現することをこの職場で学びました。自分を受け入れたことで、恐れずに、肯定的な意見も否定的な意見も自由に表現できるようになったと思います。
学歴は大切な資産ですが、それが全てではないことを僕の経験は物語っています。≪Martin≫
MartinはZARIBEE Bikeにとってなくてはならない人材です。最も長く代表の盛田を支えてくれているのも彼であり、RMとして彼がライダーに寄り添い、やりとりした記録である「Martin Note」と呼んでいる手書きのノートは、その後、体系的にまとめられた上で後進の手本として活用されています。Martinが実践して作られてきたRMの姿は、ライダーがZARIBEEのサービスを評価してくれる理由の一つとなっています。
ZARIBEE Bikeの先の道
ケニアにおいて、低所得者層は銀行口座を持つことができず、自分の信用情報を証明することが困難です。ZARIBEE Bikeは、バイクライダー自身の「信用」を作り上げ、今後彼らがより多くのファイナンスサービスを利用できるようにしていきます。
また、より安心して働ける仕組みも作っていきます。ライダーのためのセーフティネットの構築とも言えます。現地では、道路環境の悪さから事故に遭いやすく、また、治安の問題からバイクの盗難も数多くあります。ライダー自身が亡くなることも残念ながら発生します。そうした事態に対応するため、支え合えるコミュニティづくりに加え、自身が事故を起こした際に医療費が入る、万一自身が亡くなった時にも家族に補償が入る保険の提供をもって、安心して仕事ができる、という仕組みづくりを行っています。
このようにZARIBEE Kenyaは、既存のファイナンスビジネスという枠にとらわれず、顧客のより良い生活のために、そのビジネス範囲も広げていきます。
現地法人設立から3年を経て、ZARIBEE Kenyaは2024年8月に新オフィスを構えました。これにより、物理的に5倍以上の車両在庫スペースを持つとともに、オペレーションのキャパシティを大きく拡大しました。ケニアの首都ナイロビではZARIBEE Kenyaのサービスを受けた2,000人を超えるボダボダライダーが走り、月に200件を超える新規契約を行っています。
契約数は増えても、ライダーたちがバイクを手にした時に見せてくれる笑顔は、サービス開始当初からあまり変わりません。ZARIBEE Bikeサービスの拡大とともに笑顔の数は増えています。現地4人のメンバーで開始したビジネスは、既に40人を超える組織となりました。「アフリカで真面目に働く人が報われる世の中にする」ことを掲げて開始したケニアの事業はまだまだ始まったばかりで、やらなければならないことだらけです。
おわりに
スカイライトがコンサルティングサービスを提供しているクライアントの多くは日本企業です。その日本企業がこの先、どのような挑戦をしていくのか、そしてスカイライトがパートナーとして求められ続けるにはどうすべきかを我々は常に考えています。日本企業の中で、アフリカに限らず「新興国に挑戦したい」と考え、その一歩を踏み出せるのはほんの一握りです。スカイライトは、グローバルに挑戦する企業をしっかりとサポートできるよう、先んじて現地で自らチャレンジを重ね、「いつか」に備えていきます。