「GoogleとFacebook、GDPR(EUの一般データ保護規則)施行初日にさっそく提訴される」「Appleに続き、Amazonの時価総額が1兆ドルを突破」「トランプ大統領が米国への生産移管をAppleに要求」……。その頭文字をあわせてGAFAとよばれる企業4社に関する話題がここ最近大きく取り上げられるようになりました。様々なサービスを通じた企業としての存在感が突出する一方で、雇用や税制に加え、表現の自由やプライバシー保護の問題など、もはや経済だけでなく社会システム全体への影響力が大きくなるにつれ、彼らに対する風当たりはより一層強くなっています。しかし4社以外にも、Airbnb、Uber、中国のアリババ、テンセント、バイドゥ等、蓄積されたユーザーデータを武器に様々な分野で既存の産業を変革するプラットフォーム企業は、爆発的に成長しながらその経済的支配力を増しつつあります。
企業が商品やサービスという形で価値をつくり顧客に売る、という産業革命以降の直線的なビジネスモデルの鍵は、大規模な資本投下による効率化でした。経済格差、情報格差など世界に偏在する差別化要因を見つけ、大型の工場や人的資本、流通経路に大規模な投資を実行し、トップダウン式の経営計画と階層型組織によって価値を生みだし、それをターゲット顧客層に効率的に分配する。そうしたサプライチェーンの構築が20世紀に競争優位をもたらす主な領域の一つであり、1990年代にインターネットの商用利用が本格化した以降も、企業はEC(電子商取引)という形でこの流れを推し進めました。
ところがテクノロジーは時として“便利なツール”としての存在を超え、経済と社会に革命的な変化をもたらします。21世紀に入り、処理能力が高く安価なコンピュータとモバイル・インターネットの急速な普及は、かつては大きな組織しか入手できなかった様々な資源や技術を個人が手にすることを可能にしました。消費者が自らプロデューサー(モノやサービス、コンテンツを作ったり提供する人)となって価値を生産し始めた現在、企業にしか成し得なかった価値連鎖は分解され、ビジネスの価値の中核は企業から顧客への一方向のサプライチェーンから、企業と個人、個人と個人を結びつけ、お互いの価値の交換を取引として円滑化するネットワークへと移りつつあります。
ネットワークはその性質上、ユーザーが増えるほどユーザーに便益をもたらす「ネットワーク効果」により雪だるま式にユーザーを増やすため、データ分析による収穫逓増とともに、巨大なプラットフォーム企業に勝者総取りという形で現代の独占をもたらそうとしています。しかし自社が保有する資産ではなくユーザーからなるネットワークを活用して競争するという特性ゆえに参入障壁は低く、隣接するライバルや新規参入者との猛烈な競争にさらされるのもこのビジネスモデルの特徴です。また各国政府の規制やブロックチェーン等の新しい技術の進歩とともに、その支配的地位を瞬時に奪われる可能性さえあります。
こうした大きな潮流が自社に与えうるインパクトだけでなく、さらにその先に起こりうる次のパラダイムシフトに向けて、今後実用化に向かう様々なテクノロジーの本質をいち早く考察し取り入れていく姿勢があらゆる企業にとってますます重要になってくるといえるでしょう。
『プラットフォーム革命』 アレックス・モザド&ニコラス・L・ジョンソン(著) 藤原朝子(訳) 英治出版 2018年 |
『the four GAFA
四騎士が創り変えた世界』 スコット・ギャロウェイ(著) 渡会圭子(訳) 東洋経済新報社 2018年 |