東北プロボノプロジェクトの勧め

COLUMN

(文:シニアマネジャー 山田 孝弘/04 SKYLIGHT CONSULTANT にて紹介)

東北プロボノプロジェクトのご紹介

東北地方でのコンサルティング活動を開始してから5年が経ちました。

5年前、福島県で避難指示の解除が進み、帰還される企業へ経営支援活動を行う官民一体の合同チームが立ち上がりました。そこにスカイライト コンサルティングとして参加したのがきっかけです。

被災を経験した東北地方は、特殊な環境下にあります。放射能災害や津波被害があった地域からは転出する人も多く、人口減少や少子高齢化が早回しで進められました。インフラ復興に一区切りがついたものの、堤防と更地で囲まれた街の景観は、未来を担う若者の心理にも影響しています。

微力ながら現地での活動を展開するうちに、活動の幅も徐々に広がっていきました。その一環に、個人として参加した東北プロボノプロジェクトがあります。プロボノとは職業の専門性を活かした無償のボランティア活動で、東北プロボノプロジェクトでは、東北各地で地域課題と真っ向勝負する起業家とともに、地域貢献に直結する仕事に取り組みます。プロボノ活動そのものは、都内からリモートで行います。

職業の専門性といっても、特殊な職業である必要はありません。人口減少が大きく進んでいる地方では、スキルの希少性が都心の感覚と異なるので、自分が今持っているスキルを活用して貢献することができます。

私は岩手県大船渡市の起業家である高橋さんを担当させていただきました。

「地域が誇れる産業を生み出したい。一人に一つのありがとうを届けたい」

そうした言葉と行動に触れながら、地域課題に取り組んできた体験は、仕事の意義の捉え方を奥深いものへと変えてゆき、日常生活のバイタリティへとつながっていきました。同時に、大船渡市が第二の故郷と感じられるようになり、私の人生に愛着あるものが一つ増えました。

本稿では、私の体験を通し、このプロジェクトの魅力をご紹介させていただきます。

地域の核として活動する起業家との協同体験

東北プロボノプロジェクトは、複数の起業家に参加いただいています。それぞれの起業家とプロボノ数名のチームを作りますが、私はプロボノリーダーとして高橋さんを担当させていただきました。高橋さんのもとには、2年間で年代も職業も様々な10名ほどの方々が、宮城県から熊本県まで幅広い地域より参加されました。

プロボノリーダーは、東北プロボノプロジェクトの特徴の一つです。全く異なる経験を持った初対面の参加者同士が、本業を抱えた時間的制約の中で、起業家の活動を支え、スムーズにプロジェクトを進行していくためのサポート役として動きますが、作業の指示をするわけではありません。自分はどう貢献するのか。何をやりたいと感じているのか。こうした問いに一人ひとりが向き合いながら、具体的な活動を相談して決めていきます。様々な動機を持って集まったメンバーが、起業家の熱にあてられた状態で意見をぶつけあう中で、起業家の真意や参加者同士の相互理解が進みます。

岩手県大船渡市は、震災直前に4.1万人あった人口が3.5万人まで減少しています。

高橋さんは、震災発生直後、地域が誇れる製品・仕事の創出を志されました。地域に根差した素材を探す中、椿の花と出会います。地中深くに根を張る椿は、津波にのみ込まれながらも数多くが生き残り、震災直後でも花を咲かせる姿が市民を勇気づけました。

この椿を使った製品開発に着手し、椿茶や椿を使った麺類など、多様な製品を開発されました。椿の採取や加工は地域雇用も生み出しますが、特に、就労継続支援B型事業者での雇用創出は、特徴的な取り組みと言えます。就労継続支援B型事業者という性質上、仕事量を安定させることが難しく、ノルマ化された仕事の仕方が合わない現実があります。そうした事情に寄り添い、ノルマは設定せず、賃金も高い形での協力関係を築かれました。この活動は評判を呼び、今では東京の福祉施設との取引にも広がっています。

また、町を広く占める未利用地の景観も問題となっていました。この未利用地の活用を大きなチャレンジと捉え、市の協力も得ながら、椿の植樹活動を開始されました。同活動は景観問題の解消だけでなく、若者も含めた都市の活力を生み出すことにつながります。

こうした活動は、地域にも受け入れられ、広がっていきました。活動の主旨に賛同する地域企業が増え、椿茶の協賛となっていきます。また、賛同する他の起業家も合流し、地域ブランドとして発展を開始。このブランドに連なる多くの商品が生まれています。

こうした高橋さんの活動に対し、プロボノチームとしては、その話をじっくりと聞かせていただくことから始めました。地域課題の本質、住民の多様な感情、人口流出の状況、新型コロナウイルスによる影響など、全く知りえなかった情報や課題を聞く中で、何かをしたいという感情があふれ出てくるとともに、高橋さんの人間味あふれる魅力にもとりつかれていきました。

全体がそうした感情に包まれる中、様々な提案や考えを高橋さんに率直にぶつけていきます。初めは形にならないようなやり取りも、幾度も意見をぶつけ合ううちに、具体的なアイディアとして膨らんでいきます。

結果的に、椿茶の販売促進(営業ストーリーの立案、潜在顧客とのオンラインサロン開催、販売戦略の提案)、わかめ製品の製造技術研究(乾燥施設の空調シミュレーション、新製品の改善提案)、植樹活動の広報活動(ご当地キャラとコラボした広報動画制作、植樹活動の全国事例集め、ブランドスローガンの作成)など、多様な取り組みを展開することができました。

私自身は、このうちのいくつかに、共に手を動かす立場でも参加させていただきました。プロボノリーダーとして一歩引くこともできたのですが、やってみたいという純粋な感情が抑えきれず、あれやこれやと参加させていただいた次第です。そこには、これまでの私のキャリアでは体験できない仕事も含まれており、そうした経験ができることも、この活動の魅力です。一例ですが、ご当地キャラとコラボした広報動画などは、自分では決して思いつかないアイディアだったと思います。メンバーの熱意やスキルに触発を受けながら、脚本制作を担当させていただきました。

熱量を持ったメンバー同士が、これまでとは違う環境に身を置きながら、互いに支えあい、経験したことのない仕事に挑戦していく。こうした体験を通し、自分の可能性や志向性に気づくとともに、何気なく培ってきたスキルの価値にも気付くことができました。

これまで私財を投げうって活動を続けてきた高橋さんですが、聖人君子のような雰囲気はなく、誰よりも人間味あふれ、この活動を楽しみ、それゆえに人が集まってくるという魅力あふれる方です。こうした起業家から数多くのフィードバックや、感謝の言葉をもらいながら協同できる機会は、願っても得難い経験となります。

今後のキャリアや人生の在り方に、漠然とした悩みを感じている方もいらっしゃるかと思います。自分が過ごしてきた環境とは異なる中に身を置くことは、そうした悩みを抱える方々へ多くの気付きを与えてくれます。

東北プロボノプロジェクトとしては、高橋さんとのプロジェクトは終了しました。しかし、現在でも半数以上のメンバーが自主的に残って活動を継続していることは、こうした魅力の裏付けであると感じています。

地域格差解消の突破口になる可能性

この魅力ある活動は、同時に地域格差の突破口になる可能性を秘めています。魅力的な産業の発展は、地域に人を留め、さらには集めることにもつながります。特に、企業誘致とは異なり、地域から生まれた産業の育成は、経験や利益がそのまま地域に残ります。そして、その成功体験は、地域の活力につながり、次の産業・人材を生みだします。時間こそかかりますが、その効果は長期的であり、力強いといえます。

東北プロボノプロジェクトは、こうした産業の発展を直接支援する活動です。

プロジェクト終盤、高橋さんから「プロボノが心の支えになった」と言われました。それまでの苦労がいっぺんに吹き飛ぶ言葉であるとともに、この活動が持つ重要な価値を表していると感じています。企業活動が実を結ぶまでには時間がかかりますし、地域全体を巻き込む活動は、受け入れられるまでにも時間を要します。そうした中、自分の考えに共感し、具体的に活動してくれる存在の広がりは、起業家にとって精神的な面での支えともなります。

ここでの活動を一過性のもので終わらせないよう、今後も東北地方での活動を継続していく所存です。

Skylight Consulting Inc.

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