鷲尾:そうですね。お客様のオフィスで業務を実施させていただくオンサイトのスタイルでサービスを提供することから、弊社の事業はスタートしていますので、寄り添うことが文化になっていると思います。いまはオンサイトだけでなく、弊社のノウハウを集結した国内外のセンターを活用するシェアードモデル、そしてオフショアモデルもあります。

江浪:現在、弊社のお客様は約3,000社、BPIだと約650社のお客様とお取引がありますが、まさに「寄り添う」は創業当時からのDNAとして引き継がれていると思います。

事業の特徴としては、多種多様なお客様の存在と幅広い領域でのサービス基盤があります。お客様の企業活動である売上拡大と、事業基盤を強化するコスト最適化の両面に貢献できるサービス基盤を有していることで、市場や社会環境の変化による影響を受けにくいため、お客様への安定したサービス提供が可能です。

個別最適のサービス提供だけではお客様も闘えなくなってきました

木村:今回の組織再編の背景や狙いをお伺いできますか。

鷲尾:それぞれ別々の組織でサービスを磨いてきた、業務系のサービス提供組織とIT系のサービス提供組織の2つを融合しました。

世界情勢や経済政策、エネルギーや環境の問題など複雑な市場において、勝ち残るお客様は、独自の進化をすべきと考えていらっしゃいます。弊社が持つ業務のノウハウに加え、デジタルを組み合わせて効率化を図り、その複数のプロセスをプラットフォーム上に乗せて提供するサービスのモデルは、早期立ち上げや安定した品質が提供できるため、とても評価されています。お客様の満足度が高い理由のひとつとして、このモデルの提供が大きいのではないかと考えています。

2つの組織が持つ強みを連携させてうまくいったケースは過去にもありましたが、今回の組織再編は、先ほどのモデルをより最適化するために、業務とITの組み合わせを標準化し、お客様の「選択と集中」に向けさらなる支援を行っていくことが目的です。

江浪:これまでBPOのサービスをお客様に提供する際は、個別最適で提供していました。

お客様も縦割りの組織が多かったので、個別最適でも問題はありませんでしたが、昨今の環境変化により、個別最適ではお客様が市場や競合の中で闘えない。では、どのように経営を集中させるのかという側面が出てきました。

今回の組織再編で、持っている武器を組み合わせて、最適な形でお客様に提供できる基盤ができたというのは大きな転換だと思います。グローバルの拠点も多数ありますし、サービスの商材も幅広く提供しているので、総合力がアップし、非常に強みになっています。

木村:お客様の期待・ニーズや時代変化に合わせて今回の組織再編があったということですね。

鷲尾:いつの時代もマーケットは変化していて、企業が生き残るために打つべき施策はその時々で異なりますが――グローバル進出・拡大、デジタルを活用した事業モデルの刷新など――結局は、お客様が持ち合わせている資源をどう有効活用するかに落ち着くのではないかと思います。事業を運営していくためにやらなければいけないアクティビティというのは山ほどありますから、どう効果的にやっていくのか、弊社はそこをどうやってご支援していけるのか。

江浪:アウトソーサーとして今後も貢献していくためには、決められた業務オペレーションを正確にこなすという時代ではなくなり、お客様の変化に合わせて、何が最適な「ビジネスプロセス」なのかを、お客様の目的を把握した上で作り上げていくというモデルに変わっていくと考えています。

木村:昨今、お客様はデジタルをノンコアではなく、コア領域として位置づけ、デジタルケイパビリティの獲得――つまりは「内製化」――を進めています。しかし、当然のことながら自社だけでは対応しきれず、パートナーとの協業や共創を通じて実現していく流れがあります。また、産業レベルにおいても、いわゆるWeb勃興以前からビジネスをしているOld-Economy側の企業において、デジタルを活用した産業自体のトランスフォーメーションが進んでいます。これらの環境変化に対しても、御社のアウトソーシングサービスは価値を発揮できるものではないかと思っています。

鷲尾:業務のデータを活用したディシジョンメイキングは必要になってきていますね。その点は、差別化が可能ですし、お客様にも喜んでもらえると自負していて、業務とデジタルの組み合わせは負けないと思います。

なによりも「人の気持ち」が事業の原動力なんです

木村:BPI組織として再編されてから約半年が経ちました。組織再編を通じて感じている変化や、マネジメントとして意識されてきたことをお聞かせください。

鷲尾:組織運営の観点では、できるだけコミュニティのように運営していくことで、主体的に参加してもらえるような参加型の組織づくりを強く意識しています。新しい組織になりましたので、「あっちで面白いことをやっているから話を聞きにいってみよう」とか、「面白い場をつくります」といったポジティブな声が自然と出てくるような組織です。半年経ちましたけれど、一体感はだいぶ出てきたのではないかと思っています。

コミュニティ型の運営を通じて、互いの良いところをうまくつなぎ合わせられるということが普通になっていく――いままでの非常識が常識になってきますから――そういう観点で、「自分たちだけではやれなかったけれど、今回の組織再編を通じてできるようになった」という声も挙がっています。

もちろん「成果」も大事ですけど、何よりも「人の気持ち」が事業の原動力なので、やり方次第で、「できるかも」と思ってもらえることが増えてきたことが、組織統合のはじめの一歩ですかね。

江浪:当初は新たな動きに躊躇するようなことも見受けられましたが、徐々に当たり前になってきています。お客様に伴走しながらサービスを提供する際に、「主」となるのは「人」になりますので、気持ちを醸成していくことはとても大事だと思います。重点的に取り組んでいる次世代育成や人材交流などのポジティブな影響も、徐々に出てくるのではないでしょうか。サービス提供に関わる人や組織の気持ちに働きかけることができれば、自社の成長とお客様への貢献サイクルが加速すると考えています。

木村:組織再編というと、ついつい構造に目が向きがちですが、それ以上にイノベーションを起こしやすい風土や土壌づくり、組織開発という視点を大事にされてきたのですね。

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