そもそも何をどう成したいのか?

弊社も含め3つほどご紹介したが、私がこれまで目にしてきた新たな協働のカタチを模索・実践する企業に共通しているのは、そもそも「自分たちは何をどう成したいのか?」を突き詰めて考え、それを実現するために必要なことをゼロベースで組織運営に反映していった点である。

前出の『ティール組織』は日本での発行部数が7万部を超えるほどの反響がある。この本に触発されたからなのか、「自分の組織をティール組織のように変えたい」「何から始めればティール組織になれるのか?」という問い合わせや質問が多く寄せられているという。もうすでにお気づきではあろうがポイントはそこにはない。例えば、ビュートゾルフのような組織運営形態を模倣したいのであれば、「現場の看護師が主体的に判断しながら看護サービスを提供する会社」を実現したいと思えるかどうかだろう。既存の組織であれば組織のトップ、新しい組織であればファウンダーがそれぞれ思えるかどうか(現場に委ねることができるかどうか)が1つの分岐点になると思われる。

ちょうどこの原稿を書いている時期から、あるお客様の組織を再構築するご支援を始めた。内外の環境変化もあって改めて再構築をすることとなった。これが「新たな協働のカタチ」になるのか、既存のパラダイムになるのかはまだ分からない。また、どちらがよいということでもない。いずれにせよ、「そもそも」から検討をスタートしていく予定だ。うまくいけば1年後の本誌コラムでその結果をご報告できるかもしれない。

このお客様と同様、さまざまな環境が変わってきたことで組織の在り方を変えたいと考えている方は多い。今一度、自分たちの組織が置かれている状況や自分たちの組織がそもそも何を目指しているのか、何を追いかけているのかを考えてみるよい機会なのではないだろうか。そして「新たな協働のカタチ」がこれほど世界中で生まれているのは、ちょうどそういう時期に来ているということではないだろうか。

環境が人を変容させる

2018年は地震・豪雨・台風と自然災害の多い年だった。改めて日本は自然災害の多い国なのだと思う。それも最近のことではなく、恐らく太古の昔より自然災害の多い土地なのだろう。比べて前出のタイは自然災害がほとんどないと言っていい。地震・噴火・台風はない。スコールとしての豪雨はあるが、大抵の場合はすぐにやむ。寒波が訪れることもなく暑い時期はあるものの年中暖かい。確認していないが、「年間3回米がとれる」と聞いたことがある。

ステレオタイプ的にみるのは危険だけれども、傾向としてタイの人々と日本の人々は異なる。例えば、よく言われているのは計画。日本人は計画を必ず立てる傾向にあるが、タイ人はそうでもない。これはある意味、国の環境によるところが大きいのではないかと思われる。自然災害が多く、また作物がとれない冬が訪れる土地で生きていくためには、次への備えをしておきたくなるだろう。一方、そうでなければ備える必要などなく、むしろ今を大事にするのではないだろうか。

環境が人に与える影響は殊更に大きい。組織で働く人であれば、間違いなく組織から影響を受けるであろうことはあらためて説明するまでもない。

新しい協働のカタチを通じて、私たちは変容していくに違いない。そして、変容した私たちがまた新しい協働のカタチを作る。長い目で見ればそういうサイクルが今後まわっていくに違いなく、私は死ぬまでに何サイクルまわるのを見ることができるのか、今から楽しみである。


田頭 篤 Atsushi Tagashira

スカイライト コンサルティング リードエキスパート
2002年からスカイライト コンサルティングに参画。グローバル企業の組織改革支援や部門改革支援、大手企業のIT導入支援などに従事。現在は、ファシリテーションを活用したソフト面と、組織デザインを中心としたハード面の両方からアプローチする組織構築・組織開発の支援をしている。

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Skylight Consulting Inc.

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