女子サッカーへのスポンサーシップ:企業のメリットについて /栗原寛

COLUMN

女子サッカー市場の拡大は、多くの企業にとって魅力的な投資先となっている。UEFAのレポートによれば、欧州女子サッカーへのスポンサーシップ市場は2033年には2021年の4倍に達する見込みだ。OTTメディア(オーバー・ザ・トップ。ストリーミングを指す)の普及やデジタル化の進展がスポンサーシップ市場の全体的な成長を支えており、女子スポーツ、特に女子サッカーへの注目が高まっている。このコラムでは企業による女子サッカーへのスポンサーシップについて紹介する。

企業にとってのメリット

女子サッカーへのスポンサーシップは、企業にとって複数のメリットをもたらす。まず、男子サッカーとは異なるファン層にアクセスできる点が挙げられる。女子サッカーのファン層は女性やZ世代、家族連れが多く、これらのセグメントに特化したマーケティング活動が可能だ。女性は男性に比べてスポンサー商品の購買意欲が高いことも、スポンサーシップの価値を高める要因の一つである。

また、女子サッカーは成長途上のマーケットであり、早期に参入することで中長期的なリターンが期待できる。FIFAにより、女子サッカーの普及が進んでおり、競技人口の増加が見込まれている。これにより、スポンサー企業は成長市場でのブランド認知とプレゼンス(存在感)の強化を図ることができる。

さらに、女子サッカーへのスポンサーシップはブランドイメージの向上に寄与する。女子サッカーは「女性活躍」や「ジェンダーギャップの解消」といった社会的意義を持ち、これらの価値観を企業のブランドと結びつけることで、好感度の向上が期待できる。

具体的なスポンサーシップ事例

ここからは具体的なスポンサーシップ事例について、コンテンツホルダーのタイプごとに見ていく。スポンサーシップの対象となるコンテンツホルダーは、主に①クラブ、②リーグ、③協会、④選手、の4つのタイプに分類される。それぞれが持つアセットやリーチできる層が少しずつ異なるため、それぞれに対して最新の事例の中から興味深いスポンサーシップの事例を見ていきたい。

①クラブの事例:FCバルセロナフェミニ× Rilastil(スキンケアブランド)

2023年8月に、スキンケアブランドのRilastilがFCバルセロナの女子サッカーチームと女子バスケットボールチームの「公式スキンケア&サンプロテクションパートナー」となることが発表された。これは、競技者が女性であることに加え、ファン層も女性が多いということに着目したスポンサーシップ事例である。

2024年2月18日にバルセロナのヨハン・クライフ・スタジアムで行われた女子サッカーのFCバルセロナ対アトレティコ・マドリードの試合では、スキンケアを促進する#SkinToWin啓発キャンペーンを開始した。選手を活用したアクティベーションを行うことで、同社のブランドイメージの向上や商品の販売促進につなげている。

②リーグの事例:女子ブンデスリーガ(ドイツ)× Google

リーグの事例では、女子ブンデスリーガ(ドイツ)とGoogleの事例が挙げられる。女子ブンデスリーガは、今シーズンからGoogle pixelと4年間のネーミングライツパートナー契約を締結した。この契約には、トップパートナーとしての露出だけでなく、デジタル面でのアクティベーションの権利が含まれている。

Googleはドイツだけでなく、イングランドやアメリカなど、様々な国・地域で女子サッカーのスポンサードを行っており、同社の最新製品を使って作成したコンテンツを同社のメディアを通じて配信するなど、女子サッカーの認知を上げるための取り組みを行っている。世界的に拡大する女子サッカーの成長を認知拡大の部分で支援しつつ、同社のプレゼンスを上げていくスポンサーシップ事例と言える。

③協会の事例:The FA(イングランド)× Adobe

イングランドサッカー協会は様々な企業とのパートナーシップを締結し、ユニークなアクティベーションを行っているが、本記事では今年からFAカップのスポンサーとなったAdobeの事例を紹介する。FAカップは歴史ある大会であり、プロとアマチュアの両方が参加し優勝を決めるトーナメントである。日本における男子の天皇杯、女子の皇后杯に相当する。

Adobeは冠スポンサーになり大々的な露出をすると同時に、製品提供を通じて参加する460クラブのクリエイティブ作成をサポートする。この大会は格下チームが格上チームを倒すジャイアントキリングなど様々なドラマが生まれることに着目し、それをクリエイティブで表現するためのツールをクラブに提供するというユニークなアクティベーションを展開している。先に見たGoogleの事例と同じく、製品のプロモーションを通じて、女子サッカーのすそ野拡大にも貢献している。

④選手の事例:アレクシア・プテージャス(FCバルセロナフェミニ)× CUPRA(電気自動車スポーツカーブランド)

スペイン代表のアレクシア・プテージャスは世界最優秀選手賞を2度受賞し、インスタグラムのフォロワー数も300万を超える。まさに女子サッカー界を代表する選手であり、近年急成長を遂げている欧州女子サッカーのパイオニア的存在である。彼女は昨年だけで11社とのスポンサーシップ契約を結んでいる。

スペインのカーブランドであるCUPRAはアレクシア・プテージャスの持つパイオニアのイメージに着目し、電動自動車×スポーツカーという新たな分野でチャレンジを続ける同ブランドのイメージの強化を図っている。このスポンサーシップを通じてオンライン上でアレクシアを起用した様々なアクティベーションを行っている。

イングランドサッカー協会とAdobeのパートナーシップは、参加クラブのクリエイティブ作成をサポートし、製品のプロモーションと女子サッカーの普及の両方に貢献している。また、スペイン代表アレクシア・プテージャスと電動自動車ブランドCUPRAのタイアップは、彼女のパイオニア精神とブランドイメージがマッチした事例である。

まとめ

女子サッカーへのスポンサーシップは、ビジネス的なリターンの観点からも、社会貢献の側面からも価値がある。特に、スポンサーシップの男女別売りなどの新しい取り組みが市場を活性化させている。女子サッカー市場の成長が続く中で、企業にとっては市場での存在感を築く絶好の機会である。女子サッカーへの投資は、企業が社会的意義とビジネスの両面で価値を創造するための重要な手段となっている。

栗原寛 Kan Kurihara

スカイライトコンサルティング株式会社プロデューサー
兼 4-Football Director of Asia Pacific

2011年にスカイライトコンサルティングに参画。大手企業の業務改革・組織改革・新規事業推進などのコンサルティングプロジェクトに従事。2015年からはスポーツクラブの事業戦略の立案・推進などを支援し、現在はスペインを拠点に提携先の4-Footballと連携し、グローバルなアライアンスの戦略立案・実行支援や、企業や行政の既存アセットとスポーツ・エンターテインメントコンテンツを融合した新たな価値創出に貢献する。

Skylight Consulting Inc.

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