ー エジミウソンから提案されたとき、どう思われましたか?

羽物:まず、いきなりポルトガル語の企画書が送られてきたときは、びっくりしました。というより、そもそも何の資料か分からなかったので、翻訳ソフトを使って読んでみると、どうやらアカデミーを運営する企画書で、詳細なコスト試算も記載されていました。ただエジミウソンが来日した際に説明を聞いても、最初は自分たちがこれに一緒に取り組むことには、疑問しかなかったです。

サッカー大国ブラジルで、日本人の我々ができることなんて無いのではないか? 企画書を読んでも、説明を聞いても、最初の頃はそう思っていました。

ー それが変わったのはいつ、なぜですか?

羽物: FL-UXの件で、東京や欧州で打合せを持つのと並行して、このプロジェクトの話もしていきました。ただ、エジミウソンの想いは理解しても、やはりブラジルの選手育成の現状を見ないことには判断ができないと思いました。それで、ブラジルを訪問することになりました。このときが私個人として初のブラジル訪問でした。

実際にブラジルに赴いて印象に残ったのは、トップチームの維持で手一杯となった中堅クラブの中に、若手選手の育成をやめてしまったところがあるという状況でした。若手選手を育成するのは時間もお金もかかる投資であり、中長期の視点が必要です。それをやめてしまった。これまで数多くの選手を輩出してきて育成で有名だったチームを訪問した際、若手選手の寮が廃墟のように朽ち果てていたのが、まさに印象的でした。エジミウソンが話していた問題を目の当たりにした瞬間でした。

それで思ったのが、日本人がサッカー自体を教えることはできなくとも、組織運営をしていくことで大きな貢献ができるのではないか。エジミウソンが「時間を共にしていく中で一緒にできると実感」したことを、私も感じたということです。

エジミウソン:スカイライトの皆さんには、ブラジルまで来ていただき、様々な育成の環境やクラブを紹介し、改めて私のこのプロジェクトへの想いを伝えました。この訪問から約1年後のクラブの立ち上げまでは、まさに思い描いていたパートナーシップの第一歩であり、スカイライトの様々な知見の助けを借り、クラブの立ち上げに至りました。

ーパートナーシップとしてスカイライトはどのような部分を担っているのでしょうか?

羽物:エジミウソンの掲げるビジョンを実現するにあたり、彼が必要としていたのは、この育成クラブを事業として成り立たせ、しっかりと中長期での運営を担うパートナーだと考えました。そういったことであれば、我々もパートナーとしての責務を果たすことができる。「サッカー大国ブラジルで日本人が貢献できること」を見出したと言えるでしょう。その後、プロジェクトに対する詳細な調査を行って、体制を構築し、エジミウソンはブラジルでの拠点とスタッフ探しを、我々は運営会社の現地立ち上げや事業契約、運営資金の確保をと、双方が動き出しました。

2018年10月のエジミウソン来日時に弊社の会議室で、クラブ事業の収益化において、私たちがエジミウソン自身のブランド価値を最大限に活用する必要があると伝えると、エジミウソンが「私はチームスカイライトの一員。私を活用することに何一つ躊躇する必要はありません」と言い切ってくれたのが強く印象に残っています。

パンデミック禍でのクラブ運営

ークラブ立ち上げの半年後に発生したパンデミック禍は大きかったのでは?

エジミウソン: COVID-19のパンデミックは、立ち上げたばかりのクラブにとても大きな影響を及ぼしました。ほぼ1年間、クラブは活動できない状態でした。この難しい状況では、何をすべきかの真価が問われたと考えています。試合ができない状態であっても、クラブの価値を高めるために、施設の拡充、トレーニングメソッドの洗練などをやり続けることで、収益を上げることが先送りになってもクラブの価値を高めることができました。

その努力の甲斐もあり、2021年には選手の移籍も実現し、この2022年はさらなる移籍でのリターンについても見込めるようになってきました。困難な状況ではありましたが、私自身は自分の信念を持ってこのパンデミックに立ち向かっていたと思います。

羽物:我々もこの事業には覚悟を決めて臨んでいました。従って、パンデミックだから事業を撤退するという選択はなく、どうやったらクラブを継続できるのかということに注力しました。エジミウソンをはじめとしてクラブのメンバーにはコスト削減をかなりお願いし、必要な運営資金の追加も行いました。現在は、当初予定したU15(15歳以下)、U17の2つのカテゴリだけでなく、U20、U23や女子チームも活動に加わっています。パンデミックはまだ収束していませんが、事業としての再スタートができていると考えています。

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