2019年6月、サッカー大国ブラジルのサンパウロ州に新しいサッカークラブが誕生しました。スカイライトコンサルティングが元サッカーブラジル代表のエジミウソンとともに、世界で活躍できる選手を育成するために立ち上げた『FC SKA Brasil』です。同クラブ立ち上げの経緯から今後の挑戦について、クラブ代表のエジミウソンと、スカイライトコンサルティング代表取締役 羽物俊樹へのインタビューをお伝えします。
エジミウソン・ジョゼ・ゴメス・ジ・モラエス
FC SKA Brasil代表
1976年、ブラジル・サンパウロ州タクアリチンガ生まれ。キンゼデジャウーを経て、サンパウロFC(ともにブラジル)で活躍。2000年リヨン(フランス)へ。 2002年日韓W杯での優勝メンバーになった後、2004シーズンからFCバルセロナ(スペイン)に移籍。その後、ビジャレアル(スペイン)、パルメイラス(ブラジル)、レアル・サラゴサ(スペイン)、セアラー(ブラジル)に所属し、2011年に選手を引退。
現役時代から、自身の財団「エジミウソン財団」を設立し、社会貢献事業を行う。また、FCバルセロナのレジェンドマッチへの出場やバルサ財団での活動も行っている。 2019年よりスカイライトコンサルティングと共同でサンパウロ州サンタナ・デ・パルナイーバにて、育成型のクラブFC SKA Brasilを立ち上げ、代表に就任、現在に至る。
聞き手:BRIGHTENING YOUR WAY編集部
なぜ、ブラジルのサッカー選手育成を再興しなければならないのか。
ー育成特化型のクラブを立ち上げようとした背景を教えてください。
エジミウソン:サッカー選手としての第一線を退いてから、母国ブラジルのサッカー選手を育てたいという想いが強くなっていました。技術的な能力は高いものの、人間性や社会性が伴わないがゆえに成功できないブラジル人選手が少なからずいることを目の当たりにしてきたからです。
現代において、サッカー選手の移籍は若年化の流れが強くなっています。ブラジルでは、近視眼的かつ商業的な視点での選手発掘と輩出に傾倒するようになり、選手たちに悪い影響を与えていると考えています。この現状を打破し、ブラジルのサッカー選手育成を再興するために、私は育成に特化したクラブを自ら立ち上げるという結論に達しました。
ー育成の方針はどのようなものでしょうか?
エジミウソン:サッカー選手を多数輩出しているブラジルですが、全ての選手がプロになれるわけではありません。多くの選手は志半ばにして、サッカー選手ではない新たな人生を歩むことになります。また、注目されて欧州に渡った若手選手の中には、人間性や社会性が伴わず、活躍できない人も少なくありません。
私のクラブでは、一人の人間として人間性や社会性を養うことで新たな人生を歩む選択肢を拡げていくことも大事にしています。そのために学習施設の充実や地域貢献活動などサッカー以外の育成・教育も行っています。
育成クラブは中長期的視点を持って、かつ永続しなければならない。
ー個人でクラブを立ち上げるのではなく、共同パートナーを探した理由をお聞かせください。
エジミウソン:これは非常に重要な質問です。
今回のクラブを立ち上げるプロジェクトは、自分自身の第二の人生をかけた新たな挑戦でした。そしてこのプロジェクトは、短期的な選手の移籍を目的としたものではなく、中長期的視点で、かつ永続するものにしなければ、私の描いたブラジルサッカーの選手育成の再興は実現しません。
私個人のみで運営するのでは限界があります。私のプロジェクトのビジョンに対する理解を持ち一緒に歩んでくれるパートナーを見つけることは、成功に向けて時間を要するこのプロジェクトにとって重要なことでした。
ーなぜ日本の企業であるスカイライトをパートナーに選ばれたのですか?
エジミウソン:スカイライトと出会う前、様々な投資家や企業にこのプロジェクトの考えを説明していました。一定の理解を示してくれる方々は多くいましたが、同じ歩幅でともに歩んでくれると実感できることはありませんでした。
そんなとき、『FL-UX Football®(以下FL-UX)』というサービスの開発および展開サポートの件*で、スカイライトと出会いました。その後、時間を共有する中でこのプロジェクトの企画書をスカイライトへ送り、東京で説明を行い、その後も欧州やブラジルで時間を共にし、一緒に歩いてくれると感じました。
ブラジルに招いた際はスカイライトが地球の反対側にあるブラジルに来てくれるのか、これは一つの相互理解の尺度を測る賭けだったのかもしれません。
*FL-UXは富士通株式会社から新設分割により設立されたRUN.EDGE株式会社が提供するスポーツ映像解析サービスです。スカイライトはRUN.EDGE株式会社の設立前からFL-UXのサービス企画をサポートし、設立直後から出資しています。エジミウソン氏は同社のアンバサダーを務めており、協働する関係にありました。
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